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2010年7月 2日 (金)

工業品、工芸品

先週末、
新宿の伊勢丹で行われている
ウォッチフェアを覗いてみた。

あまたの中でも自分にとって
全く異なる雰囲気で輝いていたのは
やっぱりBreguet。

ショーケースの中に展示されていた
トラディッショントゥールビヨン・フェゼ
ひげゼンマイの巻き具合の違いにより
変化するトルク変動をキャンセルするために
円錐滑車の径の変化を利用し
チェーンでつないで駆動している。

思わずブース前でBreguetの営業担当の方と
話し込んでしまった。

いまであればもっといろんな方法で
トルク変動のキャンセルが出来るだろうし
ゼンマイすら使わないでモーターを回してしまえば
良いという回答もあるだろう。

でも昔の技術を作り続けることが出来ること。
「手段」の限られた当時に
「目的」を得るために張り巡らせた思索を
実際の物として作ることは
新しい発想へとつながるのだろう。

ともすれば高度な「目的」を安易な「手段」で
考えること無く得ることが出来る今日。
当時から今日に綿々とつながる
技術者達の思いがなし得た結果、
誰もがより高度な「目的」の恩恵を手に出来る。

当時は一部の限られた審美眼を持つものが
それ相応の投資をすることで新しい発想の「手段」を手にし、
新しい発想はより新しい発想を生んでいく。
発想は同じ「目的」を求める技術者だけでなく
異なる領域の「目的」の技術者も刺激し
より高度な「目的」へと導く。

いま改めてその込められた思念と
発想を目の当たりにすることで
すっかりBreguetの世界に引き込まれてしまった。

Dscn1285 なのでじっくりと
改めて眺めてみようと
手にしたカタログ。
Price Listは
全く自分とは異なる世界を
淡々と語り続けてくれた(涙

彼の地はやはりそういう技術を芸術として見極め
育てる文化も綿々と残っているのだろうなとも
改めて感じた。

思考や思索に対する対価が危うくなっている
現在そしてこのアジアの地で
思索を巡らせている身としては
金銭的な報酬というより技術に対する名誉に
ちょっと憧れてしまう、
中世ヨーロッパからつながるそんな文化。

技術者として刺激を受け続けたい
そして刺激を与えることが出来るモノを残したい
と思わせてくれたショーケースの中の
微細なチェーンでした。

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